TAM Music Factory
特別企画Vol.3 2002春



 
風去りぬ 作 シャインさん 

春・・・
北の大地に少し肌寒い風が吹く。
ふきのとうが雪の中からひょっこりと顔を出すと
もう、春なのだと実感する。

5月になると、遅い桜が満開になり
その下で、散り行く桜の花びらの下で宴を開く。
昔は楽しかったのに今ではそれも楽しいものではなくなった。

誰もいないのだ。

本当の俺を知っている人物は・・・・

皆、誠の旗の下へ散っていってしまった。

思い出されるのは、新選組として幕末の京都を走り回っていた日々・・・
皆、健康で生き生きしていた。
あの頃は楽しかった・・・
本当に楽しかった・・・・

「総司、近藤さん、来てくれたのか・・・・」
月明かりが照らす中、土方の部屋の中には沖田総司と近藤勇の姿があった。
「もう少ししたら逝くから待っててくれ。土産話をいっぱい持っていって宴会に花を咲かしてやるからな。
っていってもこのメンツじゃ茶会になりそうだな。」
近藤さんと総司はにこにこと笑っていて何も言わない。
「・・・?何で話さないんだ?」
「・・・・・・・」
「なあ!何か言ってくれよ!!!」
と、怒鳴ったその時・・・・

「出陣です!!!!!」
すぱーんと障子が勢いよく開き、小姓の市村鉄之助が顔を出した。
「分かった。今行く!!!!」

行ってくると、勇さんらに声をかけようと振り返ったとき一陣の風が俺に向かって吹いた。
その風はかすかに総司と勇さんの匂いがした。
それと同時に、勇さんらも消えた。

なあ、勇さん。総司。
俺は、お前らに会えて光栄だと思うぜ?
また会うときは上洛当時の屯所で誠の下にいさぎよく散っていったかつての仲間達と会おうじゃねえか。

明治二年5月11日。
土方歳三、一本木関門付近にて戦死。
享年35歳

歳三の魂は皆の待つ、上洛当時の新選組屯所へと還っていった。


music by tam(2002.5.28公開)
曲はフリーMIDI素材です。和風イメージのページからダウンロードできます。

作者のコメント:こんにちは。初めましてシャインです。この物語、新選組副長土方歳三の心中を書いたのですが、どうでしょう?これが私にとって初めて書いた新選組小説です。時代考証、いくつか「?」な所はありますが多夢さんの作った音楽とともに気に入っていただけたら幸いです。 by シャインさん 2002.5.26
曲を作るにあたって:新撰組の物語です。あまり和風にとらわれすぎず、物語に沿って素直に曲を作成しました。前半と後半で雰囲気が変わりますが、結果的には和風テイストになったと思います(^^ by tam 2002.5.26
 

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