春の向日葵 |
作 ハナさん |
ある暖かな春の日のこと。
喫茶店でフルーツジュースを飲むタヌキ君と、コーヒーを飲むキツネちゃん。
「キツネちゃんは、どんな花が好き?」
とタヌキ君が聞いた。
「季節の花が好き。春だと桜やチューリップが良いな」
とキツネちゃんが答えた。
「僕は、断然、向日葵だな。隣村にね、すっごく広い向日葵畑があるんだよ。
夏になったら一緒に見に行こうね」
「うん、行こう、行こう」
タヌキ君は、とっても行動的な男の子だった。
口癖は『井の中のタヌキ大海を知らず』
好奇心が旺盛で、何にでも一生懸命。
キツネちゃんは、そんなタヌキ君が大好きだった。
好きというより、タヌキ君の自由奔放な生き方に憧れていたのかもしれない。
春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ、そしてまた春がやってきた。
喫茶店のカウンターで、コーヒーを飲むキツネちゃん。
夏、二人は一緒に向日葵を見に行くことはなかった。
春の向日葵
二人のタイミングは、少しずつずれていたのかもしれない。
春の向日葵
二人の生き方は、少しだけ違っていたのかもしれない。
今、タヌキ君の車の助手席には、タヌキちゃんが座っている。
そして、キツネちゃんの横には、キツネ君が座っている。
夏の向日葵
これが自然なのだろう。
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